2010年代に突入して以降、千葉県北西部への注目度が年々高まってきています。

平成27年度の国勢調査では、流山市が千葉県で1位、柏市が千葉県で5位の人口増加率を記録しました。

これらの要因としては、つくばエクスプレスの開通後、それぞれの市で「流山おおたかの森」と「柏の葉」のエリアで開発が進み、新たな経済圏が形成されたことが挙げられています。

また、このような地方行政への注目度が高まる中、元外資系コンサルタントの秋山市長、元都市計画コンサルタントの井崎市長という“民間事業会社出身同士”の対談が柏の葉KOILにて行われました。

今回は、2017年9月17日に開催された「第2回 柏&流山 地域クラウド 交流会」で行われた柏市・流山市の市長対談の様子をお届けします。

登壇者紹介(柏市長・流山市長)

秋山浩保(あきやまひろやす) 柏市長

秋山柏市長

1968年柏市生まれ。筑波大学第三学郡国際関係学類卒。
外資系コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーに入社後、1994年より宅配ピザチェーンのフォーシーズ(宅配ピザチェーン「ピザーラ」の経営会社)社長室長、同常務取締役を歴任。
その後、経営コンサルタントとして様々な企業の役員を歴任し、1997年には大前アンドアソシエーツ設立に参画。
同年、井上ビジネスコンサルタンツに参画した後、リヴァンプ等において企業再生や経営コンサルティングに従事。
2009年柏市長就任し、2017年10月から3期目。モットーは「初心忘るべからず」

井崎義治(いざきよしはる) 流山市長

井崎流山市長

立正大学文学部地理学科卒業後、サンフランシスコ州立大学大学院で地理学を専攻。
その後、アメリカのコンサルタント会社で地域計画、交通計画、環境アセスメントに従事。
1989年に帰国後、株式会社住信基礎研究所で都市政策や街づくりコンサルタントに従事。
1991年から株式会社エース総合研究所主席研究員として、マーケティングや都市問題改善の国際NGOメガシティプロジェクト東京支部代表として活躍。
著書に「快適都市の創造」(ぎょうせい)、「これから発展する街、衰退する街」(朝日ソノラマ)、「ニッポンが流山になる日」(ぎょうせい)など多数。
2003年に流山市長に初当選(現在4期目)

【柏市と流山市】 意外と知らない隣の市

司会・藪本:
本日は“経営者視点”からお話を伺えればと思います。
それでは両市長お願いいたします。

千葉県柏市の“強み”と“弱み”

秋山柏市長:
柏市長の秋山です。よろしくお願いします。

ビジネス視点で話をすると、柏市役所は2,600人いる組織のため、市長は“大企業”の社長のように捉えられます。

主な仕事内容としては、「大きなトラブル発生時の判断」、「大型施策のチェック」、「将来を見越した全体戦略の立案」といったものになります。

柏市の税収を紐解くと、個人市民税個人の固定資産税が大きな割合を占め、多くの給与所得者によって支えられていることがわかります。

そのため、このような給与所得者をターゲットとした商業・サービス業が柏に集まります。これらの運営企業からの固定資産税も、税収において大きな割合を占めます。

これらの事実から、柏市は給与所得者が数多く居住するベッドタウンと言えるでしょう。

そうした方々の働き先は主に東京のため、ある意味、「東京に出稼ぎに行く街」とも言えるのかもしれません。

秋山柏市長

ビジネス視点での強みは、やはり「人口が多い」という部分です。

商業やサービス業が集積し、とても便利な街となっています。こうした背景から、人がさらに増えていく好循環が生まれています。

たとえば、新聞に入っている折り込みチラシを見てみると、スーパーのチラシが6店前後ほど入っていたりします。

住んでる人から見ると、「選択肢が多い」ということで、利便性を感じやすい部分かと思います。

しかし、県外で調査をすると、「柏という街のイメージが湧かない・・・」という声が少なくありません。「名前は知ってる!でも何があったっけ・・・あ、柏レイソルとか!?」といった感じで、そこまで街のイメージがピンときてないことが多い

千葉県北西部の地元では、「賑やかな街」「若者の街」と捉えられることが多い柏も、1都3県全体から見ると印象が薄い街と見なされています。そういった部分は、ある意味「弱み」と捉えられるかもしれません。

「都心からの距離」と「千葉県柏市の強み・弱み」

柏市の強み分析

また、われわれの発展を支えてきた常磐線も、人口減少社会では、ある意味「弱み」に変わってしまうのかもしれません。

東京都心から郊外へはJRや私鉄が放射状に伸びていますが、その一つである常磐線は、近年の人気沿線ランキングでは下位に属しています。

常磐線は、首都圏の中では人を呼び込む力が弱く、ここが厳しいところです。

また、流山おおたかの森駅の影響もあります。

かつては東武野田線のターミナル機能を柏駅が持っていたものの、現在は流山おおたかの森駅も同様の機能を持つようになりました。

こうした理由により、柏としては厳しい状況となってしまいました。

秋山柏市長

また、物販のパラダイム・チェンジが進んだことにより、柏の象徴的存在であった百貨店が衰退したことも、ある意味「弱み」と捉えられます。

国道沿いのショッピングセンターやインターネットショッピングで買い物をする層が増え、柏駅周辺の求心力が低下してしまったのです。

街の経済成長性は、生産年齢人口によって決まります。そして、市を跨いで移動をする層というのは、主に子育て世代の方々です。

こうした子育て世代の方にとって、柏が魅力を感じてもらえるような街になる必要があります。

だからこそ小学校の授業改善を進めています。ビッグデータを活用することにより、子どもたちの学力向上を目指すプロジェクトを進めています。

魅力のある小学校」の存在こそが、子育て世代が柏に集まるモチベーションになると信じています。

司会・藪本:
秋山市長ありがとうございました。続きましては流山の方ですね。井崎市長よろしくお願いいたします。

千葉県流山市の“強み”と“弱み”

井崎流山市長:
みなさん、こんにちは。流山市長の井崎です。

流山市の「強み・弱み」は、実は今から14年前に調査しました。

結果としては、知名度がとても低かったのです。流山についての印象を調べて見ると、「聞いたことはあるけど、何県にあるのかわからない…」といった状況。

ただ、ひとつラッキーだったのは、知名度が低いがゆえに地域のイメージが白紙だったことでした。白紙というのはどうにでも作り変えることができると、これを私たちはプラスに捉えました。

千葉県流山市の人口遷移

千葉県流山市の人口推移としては、平成17年のつくばエクスプレス開通後、毎年2,000人ほど増えてきました。2011年以降は毎年3,000人ペース、今年は5,000人以上のペースで人口が増えそうな勢いです。

今から12年前には、60歳前後の方々、団塊ジュニア世代の方々が多かったのですが、現在では子育て世代が増えてきており、乳幼児も増加しています。合計特殊出生率を見てもこの10年で35%上昇し、平成27年度の調査では千葉県内で4位にランクインしています。

以前は市の財政が危機に陥る可能性もあったのですが、財政的にも人口バランス的にも、現在は改善が進んでいます。

「都心からの距離」と「千葉県流山市の強み・弱み」

流山市の強み・弱み分析ですが、一般的には車のアクセス、住環境が良いと言われていました。また、私自身としては、調査前の段階で“緑”が強みだと思っていたのですね。

しかし、実際に調べてみると、“緑”は弱みであることがわかりました。森の中では不法投棄でゴミが散らばっていたり、“ちかんに注意”の看板ばかりで、「危なくて近寄りがたい」という実情でした。

そのため、これらを改善するために森の環境整備をしたり、手入れを行うことにより「楽しみ親しむ緑」へと変えていきました。

井崎流山市長

また、私が市長になる前に調べたデータでは、流山市民が約800億円も柏市でお金を使っていることがわかりました。

こうしたお金の動きを変えねばと思い、「流山おおたかの森駅」を交流拠点として発展させていくことに力を入れ始めました。

交流人口を増やす柱は、「イベント」「ツーリズム」の2つです。

柏市に比べて規模感では勝てないものの、「」に焦点をあて、「都心から一番近い森のまち」として打ち出していくことにしました。

定住人口増加策としても、共働きの子育て世代をターゲットとし、「子供のそばで働ける街づくり」を進めています。

流山市のマーケティング戦略

また、将来に向けてさまざまな施策を用意しています。これからさらに交流人口を増やすと期待されるのがキッコーマン・アリーナ(市民総合体育館)のプロスポーツ、コンサート、サーカスなどのイベントです。

平成31年4月には、流山おおたかの森駅前に音響に秀でたホールもオープンします。

今、全国的に人口が増えている地域はわずかという状況ですが、流山は今後も定住人口も交流人口も増やしていく挑戦を続けます。

組織で「人を動かす」ために心がけること

司会・藪本:
両市長から非常にビジネス的な側面で市の現状を説明いただきました。

両市ともにモノやお金を集め、市で運用していく部分にご注力されているのだと思います。

両市長ともビジネス畑から市役所にご入所されていますが、「人をどのように巻き込んで仕事を進めていくか?」という部分では、日々悩むことも多いのかなと思われます。

特に市役所・行政の方が本日の参加者にもいらっしゃいますが、「人が変わっていく」とか「新しいことにチャレンジしていく」というハードルを感じていらっしゃった方も少なくないかと。

両市長に「人を動かしていく」という部分、特に途中からトップとしてお勤め、いわゆる新社長として任務を遂行する上でのご苦労とか、ご経験談の中での成功/失敗事例を伺えればと思い、お題を出しています。

まずは秋山市長からこちらお伺いしてもよろしいでしょうか。

秋山柏市長:
「良い仕事」というのは、自発的に働けているときにできるものです。

そのため、トップとしてできることとしては、そうした人の思いに気づいてあげること。そして、思いを持っている個々人が動きやすい環境を用意してあげる、または障害を取り除くという部分ではないかと思います。

優秀な人ほど組織文化に染まりがちであり、公務員の世界でもよくあることです。

市役所の仕事では、基本的に売り上げで評価することが難しく、減点法の評価となりやすいです。

そのような状況ですと、「ミスをしないように」とか「トラブルがないように」と考え、行動してしまうようになります。

行政の世界では基本的に正解がないため、このように前例踏襲が増えてしまうのです。

そのため、自発的に何かを発案し、チャレンジングな姿勢を持つ人が少なくなってしまいがちです。

また、そういう人が稀に出てくることもあるのですが、フィットせずに民間の会社に出て行ってしまうケースもあります。

自発的にチャレンジできる人材は、市役所では貴重な存在です。そのような人の存在に気付き、仕事環境を整えることが大事だと思っています。

井崎流山市長:
私が14年前に市長になった時の話なのですが、レベルの高い柏市と秋山市長が就任された8年前の柏とは比べものにならない程、当時の市職員、特に幹部の私へのリアクションは相当ショックだったようです。

当時の流山市では行政への批判的な意見が多くあり、市民からも厳しい目で見られていたような状況でした。

市長になる前に、私がジムに通っていた時の話になります。当時ジムで顔なじみだった人がいたのですが、その人が「どこで仕事をしているのか」「どこで働いているのか」という話を全然したがらなくてですね。

で、私が市長に当選して市役所に入所したら、そのジムで顔なじみだった人がいたんですね。それがとても残念で。「自分が市の職員であること」を堂々と言える環境ではなかったんです。

その時、市民からの苦情ばかりでなく、感謝の言葉がいただけるような職場にしたいと思いました。せめて何をしてるか聞かれた際には、自信を持って市の職員であることを言えるように。

仕事での「思い込み」をなくし「思いやり」を増やす

井崎流山市長:
それで実際市政を始めてみると、まずマーケティング意識がありませんでした。

「マーケティング」と言うと特別な言葉に聞こえますが、「誰に」「何を」が明確でない仕事がまかり通っていました。

たとえば、高齢者向けのパンフレットなのに、字が小さいデザインのものが駅のラックに置いてあるんですね。また、子育て支援の行政サービスのチラシを見ると、難しい言葉で書かれていたり。

「誰に」「何を」が意識されれば、こうしたチラシの内容、デザイン、置き場所も変わってくるはずなんです。

また、コスト意識も大事です。「時間的コスト」と「金銭的コスト」があり、それぞれ「どうしたら捻出できるのか?」を意識して取り組んでいます。

今日参加されている方には経営者の方や、市の職員の方、市民団体やNPOを立ち上げた方がいらっしゃるかと思います。

是非お客様やビジネスパートナーに対し大事にして頂きたいのは、「思い込み」ではなくて、「思いやり」をベースにしてビジネスを展開することだと思います。

「思い込み」とは2つあると思っております。1つは机上の論理が先行している場合、つまりはニーズに寄り添った形でなく、自分の思いが先行しすぎている場合には気をつけねばなりません。

それからもう1つは、「自分が正しいという思い込み」。この2つで進めていってしまうと、途中で頓挫してしまうケースが多いように思います。

柏市と流山市で補完関係を築けるのか?

司会・渡辺:
私も会社で一人代表としてやっているのですが、「一人では何もできない」とよく感じます。今回のイベントもそうですが、いろいろな人巻き込み、プロジェクトを実現するために普段活動しています。

そういった際に、民間企業ではよくある企業同士のタイアップも、自治体同士ではこういう活動が難しいのかなと思います。

両市長にお伺いしたいのは、「柏と流山で補完関係が築ける」のはどのような部分なのかという内容です。

たとえば井崎市長の立場だったら「柏のこういうリソースを借りたい」とか。また、秋山市長だったら「流山のこういうアプローチを取り込めないだろうか」とか。

そういう風に「お互い補完関係が築けるものは何か?」というところで、ご意見いただきたいなと思っております。

地域クラウド交流会・市長対談

井崎流山市長:
流山市としては、もうすでに柏市にあるいろんなものを使わせていただいています。

たとえば流山市に一部近接する大学のキャンパス、麗澤大学や野田にある東京理科大学などは交流も多いため、流山市のパンフレットに使わせていただいています。まるで流山市にあるかのように。(笑)

また大堀川の桜並木づくりについても、言い方としては「流山おおたかの森から手賀沼まで」といった表現をしています。

他にも東葛テクノプラザやアミュゼ柏、キネマ旬報シアターとかを活用させていただいたりもしています。イベントでは柏おやじダンサーズの方にもよく流山市内のイベントに来ていただいたりとか。市民にとっては文化的に柏市との市境は意識することなく交流がされていますから。

秋山柏市長:
ビジネスサポートのご質問についてですが、市役所の職員にとって「ウッ」とくるのが、「流山はこういうことが出来ているのに、どうして柏で出来ないんだ?」という問いです。

おっしゃる通り、確かに隣町が実践しているにも関わらず、部分的に地元の方が遅れている部分が目についてしまうのは致し方ないとも思います。

しかし、あまりマイナスな部分ばかり指摘されてしまうと、公務員も人間でたるため、ガードが固くなってしまいがちです。したがって、提案型の「流山と柏の良いところどりをしましょう」という前向きな考え方が、市を動かすには必要だと思います。

ただ、何度も繰り返し申し上げた通り、新しいことへチャレンジするための敷居は高いものです。担当職員がやる気に溢れていても、課長からOKが出ない場合も少なくありません。

そのため、お互い(両市)のいいところを取り入れようという前向きなスタンスが市を動かし、みなさんのビジネスをバックアップしていける思います。

柏と流山が今後面白い場所になるためには?

司会・渡辺
柏と流山の民間企業の交流を深め、また行政を巻き込むことでイノベーションが起こると思っています。

つくばエクスプレス沿線でいうと、つくばには技術系のベンチャーなど面白い会社もたくさんあります。

僕らも、「この地域を日本のシリコンバレーにしよう!」という気持ちがあり、こういうイベントをキッカケに民間企業と行政の垣根を越えていければと思っています。

今回の地域クラウド交流会も、今度は11月に再度柏で実施されますので、みなさんもご参加いただければと思います。

最後にお集まりいただいた方に、両市長からメッセージをいただければと思います。

井崎流山市長:
最後にということなので、やはり意識していただきたいのが、「思い込み」ではなく「思いやり」をもってビジネスを展開して頂きたいと。

お客様のニーズに寄り添う、パートナーとWIN WINを作っていく。思いやりをベースにしていただければと思います。

また、ビジネスにはいろんなものがありますから一概には言えませんが、もしみなさんが「大きな夢」や「高い目標」を持っているのであれば、それは大切にしていただきたい。その夢や目標に向かって、一歩ずつ前進して欲しいと願っています。

秋山柏市長:
先ほど「人を動かす」のセッションで柏市長としてお話をしましたが、ここにいらっしゃる多くの方はスモールビジネスを営んでいるため、大企業とマネジメントスタイルが違うとも思います。

スモールビジネスでは「会社 = 社長や役員の存在そのもの」だと思うので、理屈ではなくて「なんかわからないけど、この人には惹かれてしまう」というオーラが大事だと思います。

そのオーラはどうやって出るのかというと、「24時間、世界の誰よりも自分の事業を考えている」と言う姿勢からだと思います。

極端な例えかもしれませんが、普通の人が遊んでいる時や食事をしている時も自身の事業を突き詰めて考えていると、なんらかの気づきが生まれたり、オーラが出てきたりします。

スモールビジネスの最初のメンバーは、厳しい環境の中で仕事をしなければならないので大変です。

でも、実際スモールビジネスとはそういうものなので、厳しい環境を乗り越えるためには理屈でなく、ハートの部分で「仕事が凄く楽しい!」と感じられることが必要だと思います。

スモールビジネスからチャレンジしているみなさんは、是非ともハートの部分を徹底的に楽しんで、オーラを身につけてもらえればと思います。

秋山柏市長&井崎流山市長

 11月22日(水)に「第3回 柏 地域クラウド交流会」が開催!

今回の市長対談が行われた地域クラウド交流会が11月22日(水)に開催されます。

「起業家支援 × 地域活性化」 をコンセプトに、日本全国で開催されているプログラム「地域クラウド交流会」。

詳細は以下から確認できますので、是非ともチェックしてみてください!