2018年2月に柏の葉KOILで開催されるStartup Weekend Kashiwa Vol.1 。
その開催記念特集として、「柏」と「Startup Weekend」の両方にゆかりがある人を紹介するインタビュー連載が始まります。
第1弾の今回は、過去に「Startup Weekend Tsukuba」にて準優勝し、高校3年生で起業した内山恵梨香さんにお話を伺いました。
現在は、渋谷100BANCHのアクセラレーション・プログラムに参加している内山さんの「今」に迫りました。
内山恵梨香(うちやま えりか)
株式会社FirstMake
代表取締役COO
1998年生まれ。高校時代に参加した起業イベント「StartUpWeekendTsukuba」で準グランプリを獲得。その後、法人設立に必要な費用をクラウドファンディングにて調達し、高校の卒業直前に株式会社FirstMakeを創業。東京理科大学の経営学部に在学中。100BANCHのアクセラレーションプログラムに参加しながら、メイク初心者向けのメイク動画アプリ「FirstMake」を開発している。
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挫折と戸惑いの連続だった中高時代
― 茨城県で中高時代を過ごしていたとのことですが、当時はどのような生徒だったのでしょうか?
もともとは長野県の小学校に通っていたのですが、両親が転勤するタイミングで茨城県に引っ越しをしました。
その後、茨城県の中高一貫校へと通い始めましたが、最初の頃は完全に落ちこぼれていました。日課表が1日に9時限目まで組まれているようなハードなスケジュールの日々で、とにかく一心不乱に勉強をする同級生に、気がつけば差をつけられていました。
その結果、定期テストでの数学の校内偏差値が29しかなく、「偏差値って30を切ることがあるのか・・・」と呆然としてしまったのを覚えています。
ただ、自分の意思で中学受験をして入った学校であったため、「このままじゃ終われない」という思いを次第に持ち始めるようになりました。実力が伴ってないと何を主張しても説得力がなかったため、まずはわかりやすい結果を出すことを目標とし、勉強への意欲を次第に取り戻せるようになりました。
結果的にはその努力が報われ、高校進学時には成績トップ生徒が集まる選抜クラスに入ることができました。
― 学力レベルが高いクラスに入った高校時代。大学受験を意識し始める頃かと思いますが、どのように過ごしていたのでしょうか?
選抜されたメンバーは、「医学部・理系選抜クラス」という難関国公立大学や医歯薬学部を目指すミッションを課されていたため、自分もそういった道を目指すものだと思っていました。
ただ、高校時代に将来を考え始めると、周りと自分の考え方の違いに戸惑いを覚えるようになりました。
クラスのみんなが「医者や薬剤師になりたい」と言っている中、自分がそうした道に進むイメージを持てなかったです。
また、将来の夢を聞かれた際に、一般的な高校生に人気の職業が「スポーツ選手」や「教師」であることにも疑問を抱いてもいました。
「日本人の大多数がサラリーマンなのに、どうしてその事実と向き合う高校生が少ないのだろうか?」
このように感じることが増え、次第に自分自身で情報を集め始めるようになりました。そのため、高校生の頃には、よくNewsPicks(ニューズピックス)を見ていました。多くの社長さんやビジネスマンの方々が意見とともにニュースを解説していたため、世の中について高校では知らなかった知識も身につけることができました。
<インタビュー記事>
内山恵梨香さんがピッカー仲間からもらった「挑戦する勇気」
そうした知識やアドバイスをいただき、やはり自分で選択をした道に進みたいと思ったため、在学中に文系クラスへの移動を希望するようになりました。
進学校で勉強ができる人は自然と難関大学の理系を目指す人が多く、実際に自分もそうした波に流されそうになっていました。しかし、自分の社会や経済、ビジネスに対するワクワクする気持ちは抑えられませんでした。
父親が薬剤師であったため、最初は家族からも反対されていました。けれども、「私は薬学の道に進みたいわけではない」ということを両親に伝え続け、最終的には自分のやりたいことを尊重してもらえるようになりました。
人生の転機となった「Startup Weekend Tsukuba」
― 内山さんは高校時代に「Startup Weekend Tsukuba」に参加していますが、どのような経緯でイベントに興味を抱いたのでしょうか?
高校3年生で文系クラスへと移動したのち、ビジネスに興味を持っていたことから東京理科大学の経営学部への進学することを決めました。
指定校推薦にて入学することになったため、秋口の時点では進路が決まっていて、このタイミングで外の世界に積極的に飛び出してみようと思い始めました。
さまざまな情報を調べていたら、世界的な起業イベントである「StartupWeekend」が、地元で開催されるというニュースを知りました。スタートアップを体験できるイベントということもあり、私はすぐに参加の申し込みをしました。
参加者にはビジネスマンが多く、年上の人ばかりが参加するイベントであるため、もちろん高校生としてチームに加わることへの不安を感じることもありました。
けれども、目の前に参加できるチャンスがあるのに、それを逃したくないと次第に思うようになりました。
信頼できる人たちが頻繁に情報をシェアしていた「Startup Weekend」ということもあり、価値あるイベントに参加ができる貴重な機会であると思い、覚悟を持って挑戦することにしました。
<Startup Weekend Tsukubaでの1枚>
― 高校生にして参加を決意したのは素晴らしいですね。実際に参加してみて、自分ができたこと、不安に覚えたことなどは何かありましたか?
もちろんわからないことも多いとは思っていたのですが、NewsPicks上では「意欲のある若い人は歓迎される雰囲気」を感じていたため、まずは積極的に自分から取り組んでみようと思いました。
そこでドンドン話しかけてみると、意外と何とかなるものでした。
わからないことは同じチームのメンバーが優しく解説してくれましたし、時間が経つにつれて「自分は高校生だからついていけないかも・・・」という不安は、次第に消えていきました。
また、自分たちのチームは女性向けのサービスを企画してこともあり、私の意見に耳を傾けてもらえる機会も多く、チームの力になれている手応えを感じながら取り組むことが出来ました。
準グランプリを受賞し、クラウドファンディングで登記費用を集める
― その「女性向けのサービス」が、のちのFirstMakeというサービスになるわけですよね。実際に参加してから起業に至るまでは、どのような経緯だったのでしょうか?
私自身が中高時代に勉強一色だったので、実は全然メイクをした経験がありませんでした。「メイクをやってみたい」という気持ちはあったものの、そのやり方が全然わからずに、当時は途方に暮れていました。
女性誌を手に取ってみても、メイクを初めてやる人にとってわかりやすい解説ページなどはなく、当時の自分でも理解できるメイク情報が欲しいと思っていました。
雑誌やWebサイトはオススメのコスメや最近のトレンドを教えてくれますが、「実際にどう使ってみるのか?」「どうした写真通りの色味が出せるのか?」という部分を知ることは難しかったのです。
そうした問題を解決するための「ハウトゥー動画メディア」が必要であると感じ、「Startup Weekend」のアウトプットとしてFirstMakeのピッチを行いました。
結果的には準グランプリを獲得し、Startup Weekend としての3日間が終わった時にはアドレナリンが最高潮に達していました。チームメンバーからも「続けましょう」と言ってくれたのが私自身本当に嬉しくて、そのままプロジェクトを進めることにしました。
― 事業化を進めるために、その後クラウドファンディングを行っていますよね。当時を振り返ってもらえますでしょうか?
サービスを立ち上げるにあたり、TFFという筑波大学OBが設立した団体から支援していただくことになりました。
起業時の法人登記費用はクラウドファンディングで調達することにし、プロジェクトとして立ち上げる際にはお力添えもいただきました。
LINE株式会社の代表取締役を務め、その後に株式会社C Channelを創業した森川さんも支援を呼びかけてくださり、結果的にたくさんの方のご協力をいただくことが出来ました。
<株式会社C Channel での森川さんとの1枚>
クラウドファンディングの目標金額は当初20万円に設定していましたが、スタート後すぐに目標を達成し、1ヶ月間で30万円を超えるご支援をいただくことができました。
プロジェクトの募集支援が終了を迎えた際には、本当に涙が止まりませんでした。最初は資金が集まるか本当に不安でしたので、自分が出会ったこともない多くの人が出資してくれたという事実に感謝すると同時に、この期待に応えたいと思うようになりました。
「起業家」と「大学生」という2足のわらじ
ただ、起業をしてから現在に至るまでは、本当に苦しいことの連続でした。
コンテンツを作るためのノウハウが足りなかったり、相談した方のアドバイスを全て取り込んでしまったりしたことで、事業の方向性がブレてしまっていたのです。
会社を続けていくことの不安に苛まれて、プレッシャーに押しつぶされそうな時期もありました。ただ、そうしたピンチの時には有難いことに多くの人が手を差し伸べてくれました。
事業がブレてしまっているときには、「私が心の底からやりたいこと」と向き合うためのアドバイスを頂けました。
また、大手企業のインターンにも参加する機会をいただき、事業を成長させる上で貴重なフィードバックをいただくこともありました。当時のインターン仲間には素敵な人が多く、中にはFirstMakeにジョインした人にも出会えました。
今の自分がプロダクト寄りに動けているのも、今いるチームメンバーがいるからに他ならないと思っています。
現在は100BANCHのアクセラレーションプログラムへ参加していて、今でもたくさんの方のご協力があって自分たちが続けられているのだと思っています。
女の子にありがちな「美容情報をシェアしない問題」
FirstMakeという事業を伸ばしたいと考えた際に、自分のメイクレベルの向上が、サービスの成長に不可欠であると考え始めるようになりました。そのため、高校を卒業してから現在に至るまで、数多くの試行錯誤を重ねてきました。
書籍やインターネット上の情報をくまなく読み漁ってみたり、お風呂でコスメの違いをひたすら試して比較してみたりすることで、効率の良い情報収集の方法もわかるようになってきました。
ただ、そうした取り組みをしていると、「友達には美容の情報をシェアしたくない」という感情を持つこともわかりました。そして、この感情こそが、メイクがわからない人にとって最大の問題であると気づきました。
今の若い女の子の間では、美容情報の収集に特化したSNSアカウントを作成し、誰にも知らせていないというケースも少なくありません。
トレンドコスメ情報などは共有することもありますが、そもそもの「美」に対するオーソドックスな知識なり方法は、自力で探索する他になかったのです。
― そうした「シェアされない情報」を適切に伝えていくことが大切となってくるのですね。そうした問題を解決するためにチャレンジしたいことや、今後の展望などはありますでしょうか?
もともとは「メイク初心者」が初めて美の情報を集める部分に問題意識を抱いていましたが、現在ではその先の「自分らしさ」を感じてもらえるような領域にも踏み込みたいと考えています。
確かにメイクを始める段階では高いハードルがあり、試行錯誤は否が応でも重ねるため、なんとか気合いで解決している人が少なくないとも気づくようになりました。
ただ、それと同時にメイク初心者から卒業出来たとしても、また別の「美」に対する問題を誰しもが抱いていることがわかりました。
たとえば、TPOをわきまえるためのメイクレベルに到達できている人は多いのが実情です。ただ、「自身の内面」と、自身が描く「理想の外面」が一致してないもどかしさを感じている人は少なくありません。
だからこそ、同じ化粧品を使い続ける女性は少なく、頻繁に入れ替えを行ってているのだと思います。年を重ねていっても変わらない美への追求を、“初めてのメイク”からずっとサポートするためのサービスを現在は目指しています。
「自分なりの美」を手に入れるためのお手伝いを、FirstMakeで実現できればと思っています。
<メイク動画を撮影している際の様子>
柏の思い出と「Startup Weekend」に参加することの意義
― 今回のStartup Weekend は「柏」で初開催のイベントとなります。中高時代は頻繁に柏へ足を運んでいたとのことですが、当時の思い出などは何かありますか?
柏の思い出としては、高島屋のステーションモールに入っていたスイーツパラダイスを目当てに、柏駅周辺には、たびたび足を運んでいました。
よく、「千葉の渋谷」と言われる柏ですが、茨城県民にとっては「地元から出やすく何でも揃っている街」であったことから、まさに流行や商業施設が集まっていて便利な立地でした。
あと、ちょっと離れた位置にラウンドワンがありましたが、柏駅から当時の同級生と歩いて遊びに行く機会も多かったです。今は新しく出来たアリオに移ってしまったとのことで、かつての場所が廃墟になってしまったという現実は到底受け入れられません(笑)。
― ラウンドワンまで柏駅から歩いて行く人がいたことに衝撃です(笑)。では、最後に内山さんの経験を踏まえて、「Startup Weekend」に参加する高校生や大学生、若手社会人といった参加者の方々へのメッセージをお願いします!
「イベントで一体何が起こるのだろうか?」という疑問は、実際に足を運んでみないと答えが出せないと思っています。特にビジネス経験のない若い人とっては、想像もつかない世界ですよね。
自分が高校生のときには、「学ばないと動けない」という思い込みを抱いていました。けれども、「Startup Weekend」で一番評価されるのは、「まずは動くこと」でした。
運営のメンターやコーチの方に「どう思いますか?」と聞いてみても、その問いには答えてくれず、まずは自身の体や足を使って情報を拾ってくることを求められていました。
また、若ければ若いほど注目されるチャンスが広がりますし、フィードバックをもらいやすいのは間違いありません。
貴重な意見には必ず耳を傾け、真摯に改善を重ねていけば、きっと道は拓けてくるのだと信じています。
今の時代はさまざまな情報へアクセスしやすく、若い人にとっては本当にチャンスなタイミングだと思っています。そうした好機を必ず自分のモノにしていくためにも、是非とも「Startup Weekend」に参加してみることをオススメします。
遂に柏で初開催!スタートアップを54時間で体験できる「Startup Weekend Kashiwa」が、2/9(金)〜 2/11(日)に開催されます!